税務調査と人件費(役員賞与など)
税務
人件費の税務調査にご注意
役員賞与認定や架空人件費
-福利厚生、交際費を含め-
その他
- 2015.08.18 -
人件費(広義)のチェックポイント
広く人件費を捉えると、賃金給与の他、福利厚生や交際費も含められます。
また、中小同族会社では社長による人件費操作も困難ではありません。
以下では、税務調査で指摘されやすい役員賞与や外注費事例等について、概要を見ていきます。
役員賞与の問題
役員賞与は、原則として必要経費(損金)として算入されません。
よって、役員賞与認定された場合は、法人税・源泉所得税の追徴課税を受けます。
税務調査で見られる類型として、以下のようなものが挙げられます。
- ①交際費の私的使用
- ②みなし役員規定の適用
- ③福利厚生費との混同
①交際費の私的使用
オーナー経営者の場合、株主等からの監視・責任追及は実質的に存在しません。
そのため、会社の財布=自分の財布という感覚もあると思います。
しかし、法人税法上は両者を混同できず、当然に区分が必要です。
税務調査において、以下のような問題事例が挙げられます。
- ・配偶者等家族のみでの飲食レジャー
- ・本来贈答用であるべき、商品券等の個人利用
- ・同業者団体での、任意参加の海外旅行
②みなし役員規定の適用
オーナー経営者が、家族を従業員としているケースも多いと思います。
従業員であれば、賞与支給も損金となりますが、みなし役員に該当すれば否認されます。
(役員賞与に該当します)
なお、みなし役員の判定は、持ち株割合等によって、決まります。
オーナー会社の身内ならば、5%が一基準となります。
ところで、事業承継の一環で、子への自社株贈与・譲渡が行われることがあります。
毎年少量を譲渡・贈与している場合、いつの間にか、みなし役員になっていることがあります。
このとき、従業員身分のままで賞与を支給した場合、役員賞与となります。
③福利厚生費との混同
福利厚生と認められるためには、基本的に、全社員が恩恵を受けられる必要があります。
例えば、以下のような支出は、税務調査で役員賞与認定される可能性があります。
- ・一部社員との慰安旅行
- ・一部社員だけが利用できる、スポーツクラブ入会費
架空人件費の計上
架空人件費の計上は、脱税に該当します。
税務調査等、発覚の端緒としては、以下のような事例が挙げられます。
- ①住民税特別徴収納税通知書との不一致
- ②住民票住所の不存在
- ③タイムカード・賃金台帳等のチェックと不整合(二重打刻)
- ④扶養控除申告書の有無、筆跡鑑定
- ⑤税務調査における、他の従業員へのヒアリング
- (「○○さん、最近出社されてますか?」といった質問)
架空人件費でよくあるパターンは架空従業員のケースだと思われます。
なぜなら、役員は登記が必要となり、義務と責任の関係から発生しにくいからです。
従業員という身分上、アルバイトでない限り、フルタイム出勤が通常です。
役員の妻等は人件費に計上されやすいですが、反対に勤務実態を疑われやすい対象です。
また、個人事業主で他の会社の従業員になる方もいると思います。
この場合も、その実態は疑われやすいと思われます。
なぜなら、個人事業主では、確定申告が行われ税務署も活動内容を把握しやすいからです。
なお、少し話しは外れますが、給与か外注費かは、取引実態等から総合的に判断されます。
例えば、従来従業員として働いていたが、ある時期から外注先となったような場合です。
一つの目安として外注費という認識があるならば、その人は確定申告をするはずです。
仮に無申告者が多い場合は、個人事業主ではなく給与受給者との意識が強いともいえます。
なお、個人事業主でも他の会社の従業員となり得るため、必ずしも問題というわけではありません。
架空外注費の計上
架空外注費も同じく脱税に該当します。
税務調査等、発覚の端緒としては、以下のような事例が挙げられます。
- ①不自然な市販領収証の使用
- ②縁故関係者への外注
- ③筆跡の違和感・朱肉の汚れ・帳簿の汚損度合いの相違
- ④人・物・金の流れの不一致
- ⑤公表帳簿の欠損や証憑書類との不一致
架空外注費は消費税の脱税にも使われることが多い手口です。
当然、重加算税が課される可能性が強くなります。