飲食店の税務調査ポイント【売上と事例】
税務
税務調査【売上関連の指摘事項】
現金商売にターゲットが
-飲食、美容業など-
法人税
- 2015.08.17 -
飲食店はなぜ狙われやすいか
売上は利益操作に直結しやすい項目です。
特に、現金商売の業種であれば、ごまかす余地も出てきます。
したがって、税務調査で指摘されやすい事項となり、日頃の対策も必要です。
以下では、飲食店の税務調査事例や、決算における確認ポイント等を見ていきます。
税務調査事例
売上に関する税務調査では、以下のようなものが確認されます。
- ①売上の繰延(期ずれの発生)
- ②売上そのものの隠蔽
- ③発生主義の不徹底
①売上の繰延(期ずれの発生)
売上の計上は、原則として、商品等引渡し時に認識します。
具体的には、出荷日、検収日など合理的方法の選択が認められます。
(法人税法基本通達2-1-2)
飲食店で考えれば、実際に料理が提供されたときになります。
深夜営業のバーなどで、午前0時を跨ぐサービス提供もあるかと思われます。
厳密には、1営業日と考える単位でも、2日に渡り売上計上もあり得るということです。
なお、一旦決めた方法は継続適用が必要で、利益調整等のために変更することはできません。
ただし、合理的理由がある場合は、2以上の異なる基準を採用することもできます。
②売上そのものの隠蔽
現金商売の場合、税務調査で嫌疑が掛かりやすい項目です。
クレジットカードや振込入金の場合は、恣意性介入の余地が多くありません。
なぜなら、銀行等の第三者によって、記録が確認できるからです。
他方、現金取引は領収証等発行されない場合もあり、補足は困難です。
そこで、飲食店の税務調査では、様々な手法が採られます。
例えば、原価率を調べる事例です。
飲食店であれば、材料費3割、人件費等を合わせて6割程度のコストが発生すると言われます。
そこで、過去3年程度の原価率の推移と、現在の数値を付き合わせるわけです。
理由なく原価率が高下落している場合、売上操作の可能性を疑われます。
また、古典例になりますが、映画:マルサの女では、一万円札を使う事例もありました。
例えば、調査直前に客として店を訪れ、一万円札を使います。
その際、お札にマーキングを施します。
一万円は両替に使えず、店に残りやすい紙幣です。
マークした紙幣がレジ等に残って無ければ、売上操作の可能性がある、というわけです。
その他にも、事前に客として来店し領収証を貰い、後日控えを提示させる事例もあります。
控えが提示できなければ、売上証憑として疑わしい、というわけです。
その他隠蔽発覚の端緒となるものは以下のようなものがあります。
- ①実質的経営者の手帳の記載
- ②従業員作成ノートの記載
- ③綴りから切り離された売上伝票の発見
- ④取引先の帳簿の記載
- ⑤秘匿(簿外)口座への入金状況
- ⑥レジ2度締めの痕跡
- ⑦特殊関係人(例:師弟関係)の存在
- ⑧法人名義口座と屋号名義口座との使い分け
- ⑨頻繁な納税地の移転
- ⑩主張の不自然性
③発生主義の不徹底
発生主義とは、現金の流れに関係なく、売上を認識する手法です。
例えば、賭売上やクレジットカード売上が該当します。
現金商売等でも稀に賭売上があり、見落としやすいポイントです。
税務調査前には、調査官と雑談をすることも多くあります。
その折、ふとした話題の中で、イレギュラーな掛売上等が判明することがあります。
法人パーティー等があれば、掛取引も発生するかもしれません。
(忘年会、新年会、祝賀披露会等)
決算における確認ポイント
飲食店の決算においては、以下のような売上チェックを行います。
- ①現金売上の計上漏れ
- ②イレギュラーな掛取引等の発生
- ③収益認識基準の継続適用(商品サービス類型毎)
- ④貸倒済み債権の回収
- ⑤簿外への入金(社長の個人口座等)
- ⑥売掛金残高の大きな変動(対前期比較)
- ⑦自家消費の有無
なお、基本的な話となりますが、何より大切なのは日々の記録です。
一日毎の売上を銀行口座に入金し、その額をもって売上記録とされる方もいます。
しかし、これではレシート毎の売上が把握できず、問題です。
税務調査対策のためにも、ノートの他エクセル等で顧客・レシート毎に売上管理を行います。
(多くの場合、マーケティング用に顧客別売上は把握していると思います)