海外出張や旅行、渡航費の損金・経費性

税務

海外出張

海外出張・旅行等と経費

私的旅行なら役員賞与に
-ケース別具体例-

法人税

- 2015.08.12 -

海外旅費は経費にできるか

グローバル化や交通網の発達に伴い、海外出張が身近なものとなりました。
他方、税務では役員等による私的旅行の嫌疑がかかりやすいトピックでもあります。
今後ビジネスでの海外渡航機会は増加が予測され、最低限の税務ルール認識が必要とも言えます。
以下では、海外渡航費と法人税の損金・経費性について、検討します。

会社の事業目的との整合性

海外出張を行う動機・きっかけは、十人十色です。
しかし、法人の役員としての渡航であれば、会社業務遂行に必要か否かがポイントです。
(従業員で海外出張を私的にコントロールできるケースは少ないと思われます)

例えば、税理士(税理士法人)が仕事のために、海外へ行く動機は限られると思われます。
また、名目がセミナー受講等であっても、主たる目的が観光であれば、業務とはいえません。

仮に、損金と認められなければ、原則、役員等への給与賞与として扱われます。
その場合、法人で損金経費性が認められない上、源泉所得税課税の問題が発生します。

海外出張を行うとき、以下のような書類整理も一つの税務調査対策です。

  • ・セミナー等のテキスト、案内パンフレット、受講終了証を保管する
  • ・出張結果報告書(目的、成果、同行者等の記録)作成
  • ・輸入仕入商品等の明示

ところで、会社の業務目的/内容は、通常定款に記載され、登記簿でも閲覧できます。
登記事項等との整合性も一つの目安となると思われます。

さらに、役員が配偶者等の親族を、海外出張に同伴させた場合はどうでしょうか。
このとき、以下のような事情が認められない限り、役員給与として扱われます。

  • ・役員が身体障害者であるが故の、常時補佐人
  • ・通訳としての役割(社内に適役がいないとき)

海外旅行と交際費との関係

仕事の都合上、取引先等との親睦を深めるための海外旅行もあると思われます。
このとき、業務上やむを得ない場合などは、交際費に該当します。

しかし、任意で参加できるようなときは、役員等への給与賞与となる可能性があります。
かかるケースでは、以下のような要素を総合的に勘案し、損金経費性の実質判定を行います。
(法人税法基本通達9-7-7)

  • ・旅行目的
  • ・旅行先
  • ・経路
  • ・期間

なお、同業者団体による観光目的や一般団体旅行への応募は、業務上必要なものに該当しません。
また、役員等による私的旅行の嫌疑がかけられることもあります。
その場合、旅行主催者の元へ、 反面調査 等が入る可能性があります。

海外旅行と福利厚生費との関係

自社社員の慰安を目的とした、海外旅行が行われることがあります。
このとき、以下の基準を満たせば、福利厚生費として損金処理することができます。

  • ・旅行期間(海外滞在日数):4泊5日
  • ・参加者:全従業員の50%以上

福利厚生という性質に鑑みると、基本的に社員全員が参加できる催しであると思います。
特段の事情なき限り、一部の社員のみで旅行すると、交際費・給与課税の問題が発生します。
なお、社員旅行の参加人数を証明するためには、現地での集合写真を採るのも一つの方法です。

なお、社会通念上、旅行費用が多額になった場合も、給与課税される可能性があります。
ただし、一人幾ら以下といった、金額の程度は明確にされていません。
この場合、旅行にかかる様々な諸要素を総合勘案して判断されると思われます。

【注】本Tipsでは、投稿日時点の情報を掲載しています。記事に関する税務・個別具体的判断につきましては、最寄の税務署または顧問税理士・税理士法人等へ相談確認して下さい。万一当記事に基づいて発生したいかなる損害についても、弊社は一切の責任を負いかねます。