簡易課税の事業区分にご注意
税務
簡易課税事業区分の判定
典型事例の紹介
-判別のポイント-
消費税
- 2015.06.01 -
事業区分の類型
簡易課税では、事業区分の判定が重要です。
会社によっては、複数の事業を行っており、各事業区分を分別する必要があります。
また、表面上(経済上)は同一事業でも、消費税法上では異なる場合もあります。
以下では、誤り易い事例を紹介していきます。
事業区分は以下の6種類に分類されます。
(税制改正により、平成27年4月1日以降から5→6区分に変更)
類型 | 分類 | 仕入率 | 具体例 |
---|---|---|---|
第一種 | 卸売業 | 90% | 卸問屋 |
第二種 | 小売業 | 80% | スーパー |
第三種 | 製造業等 | 70% | 農業、建設業 |
第四種 | その他 | 60% | 飲食店 |
第五種 | サービス業 | 50% | 金融・保険業 |
第六種 | 不動産業 | 40% | 不動産仲介 |
会計帳簿への記帳においては、各区分毎に分類して入力します。
区分入力されていない場合は、低い事業区分にて計算され、税務上不利となります。
例えば、第一種と第四種の2事業をしている場合、全てを60%で計算します。
(消費税法施行令第57条第4項)
事業区分の注意事例
以下では、実際の消費税事業区分につき、ミスしがちなケースを例示します。
A)製造と非製造との区別
物に加工を加える商売の場合、製造業と誤判定しがちです。
以下の場合は、「製造」には該当しません。
- ・運送時に分解された仕入商品を組み立てる
- ・仕入商品を切る、混ぜ合わせる、たれ漬けする
例えば、組立て式家具の販売や、スーパーにおける刺身盛合わせ等です。
これらは第三種でなく、第一種ないし二種になります。
消費税簡易課税を選択する場合、クライアント先の商品群はチェックしておきましょう。
B)事業用と一般用との区別
対事業者用商品か、一般消費者用商品かで、第一種/二種の区分が必要です。
例えば、下記商品では、両者が混在する場合があるので、留意します。
- ・ガソリンスタンド(タクシー向け、消費者向け)
- ・酒屋(飲食店向け、消費者向け)
- ・文房具(オフィス向け、消費者向け)
請求書、納品書、レシート等で明らかに事業者向けと分かる場合は、区分します。
クライアントに売掛台帳等があれば、コード分類も分かりやすいかもしれません。
ところで、デパートのテナントでは、消化仕入という制度があります。
例えば、デパートで洋服を買うとしましょう。
その場合、テナントは消費者に洋服を売っているため、第二種と思いがちです。
しかし、消化仕入契約の場合、テナントは消費者でなく、デパートに商品を売っています。
よって、この場合、第一種に該当します。
表面上は分からないため、予め契約書等も確認する必要があります。
C)飲食関連の業態区分
旅館業では、飲食サービスを提供している事業所も多いでしょう。
消費税法上、旅館業は第五種に分類されますが、以下のように細分化できます。
類型 | 具体例 |
---|---|
第二種 | ホテル内通路にある自販機 |
お土産店での仕入商品販売 | |
第三種 | 旅館内直営売店で、旅館が調理したサンドイッチ等を販売 |
第四種 | 宿泊客への飲食物の提供 |
客室冷蔵庫の飲食物等 | |
宿泊客以外も利用できるレストラン | |
飲食店内にある自販機 |
上記では、第三種と四種の区別がつきにくいかもしれません。
自己で飲食設備等を有しない場合、第四種ではなく、第三種に分類されます。
他には、以下のようなものがあります。
- ・宅配専門ピザ店
- ・フードコート等に出店するテイクアウト店舗
なお、飲食設備がある場合、仕出や出前は原則第四種に該当します。
しかし、持ち帰り用として製造販売する場合等は、第三種となります。
(消費税法基本通達13-2-8の2)
一方、自社製造ではなく、仕入販売ならば、第二種です。
(消費税法基本通達13-2-3)
さらに、第五種とその他を区分するには、領収書等での区分も必要です。
例えば、「○泊△食付き×万円」の設定の場合、食事代含め、全て第五種です。
D)建設業における細分化
建設業では、原則第三種です。
しかし、下記のような場合は、区分が必要です。
類型 | 具体例 |
---|---|
第四種 | 建物解体業 |
元請から原材料支給を受ける下請け業者 |
解体業では加工賃等の料金を役務提供の対価としています。
よって、第四種からは除外されます。
(消費税法第57条第5項第3号)
また、原材料の支給を受ける場合も同様です。
(消費税基本通達13-2-7)
なお、材料の有償支給を受ける場合は、その形態に注意が必要です。
具体的には、元請がその原材料を自己の資産として数量管理等している場合です。
この場合、当該資産の譲渡は、課税売上に含める必要はありません。
(消費税基本通達5-2-16)
一方、下請け側では、当該原材料を課税仕入として認識しません。
他方、自己の資産として管理していない場合は、課税売上/仕入とします。
建設業での原材料仕入は大きな金額になると思いますので、注意します。
消費税簡易課税の事業区分まとめ
小規模事業主の場合、税理士に記帳代行を任せていることも多いと思います。
しかし、事業区分判定において、その実態は事業主にしかわかりません。
従来と異なる売上が発生した場合、都度税理士に確認する必要があるでしょう。