個人事業主と経費~自営業での家事関連費区別
税務
その経費、落とせますか?
個人事業の必要経費
-家事との区別-
所得税
- 2015.04.30 -
個人事業主の経費の範囲
個人事業主の場合、法人と異なり、私的経費(家事費)が問題となります。
個人の支出活動には、プライベートな支出(衣服、食費、住居、娯楽等)も多く含まれます。
そのため、自営業と、個人の消費生活上の活動との区分が、曖昧になるからです。
では、どのようなケースで、問題となるのでしょうか。
以下、具体例を交えて説明します。
家事費と家事関連費の区別
個人事業主の経費を考える際、家事費と家事関連費を区分する必要があります。
簡単に説明すれば、以下の通りです。
- A)家事費:100%、個人の消費生活上の費用
- B)家事関連費:事業と家事部分とが併存する費用
上記Bの具体例は、店舗兼住宅における電気代です。
電力会社から一括請求される場合、日常生活上での消費要素も含まれています。
自営業の経費で問題となるのは、主に、上記Bです。
家事関連費で、必要経費に該当する部分については、経費計上が可能です。
(所得税法施行令96条)
一方、家事費は、当然に経費計上できません。
経費計上できる家事関連費
個人事業主において、家事関連費を経費計上するためには、事業と家事の区分が必要です。
主たる要件や判断基準は以下の通りです。
- ①業務遂行上、必要である
- ②明らかに区分可能
なお、上記①②については、以下の項目等が総合判断されます。
(所得税基本通達45-1)
- ・業務の内容
- ・経費の内容
- ・家族及び使用人の構成
- ・店舗併用の家屋その他の資産の利用状況
実務上、①は50%超の「金額」か否かで、判定されます。
ただし、50%以下の金額であっても、認められる場合もあります。
それは、業務遂行上、必要な「部分」(と金額)を明確に区分できる場合です。
(所得税基本通達45-2)
白色申告では50%超の金額が事業に使われている必要があり、青色申告だと50%以下でも大丈夫です。
つい、按分割合に目が行ってしまいますが、大前提として自身が白色申告か青色申告かもチェックしてみて下さい。
では、上述、店舗兼住宅における電気代のケースはどうでしょうか。
例えば、白色申告ですと事業部分が明確に区分できる必要があるので、電力会社に依頼し、子メーター(店舗対応分)を装着する等の手段が考えられます。
青色申告だと白色ほど厳格な区分は要求されないので、実務上建物全体の述べ床㎡で按分することも多い対応です。
携帯電話料金の場合だと、事業用と家事用の2台持ちをされるもの良いかと思われます。
個人事業主における経費計上の問題例
個人事業主の経費計上で問題となる、典型的ケースは以下のようなものがあります。
- ・家族/友人等との飲食代
- ・顧客獲得目的での、ロータリークラブへの入会金等
- ・同窓会への出席費用
- ・英会話スクール等の授業料
- ・スポーツクラブの会費
- ・健康診断費用
- ・初詣等での祈祷料
- ・日常生活でも使うメガネ、スーツ代等
上記は、自営業者が営む業種/業態等の個別事情にも影響されます。
(例:プロボディビルダーならスポーツクラブ会費=経費可、一般人は不可)
また、個人事業主が給与所得を得ているか否かにも影響を受けます。
給与所得とはサラリーマンや会社役員が会社から貰う一般的な給与のイメージで問題ありません。
最近は、取引先の要請や労災事故の関係で、一時的に元請会社の従業員(=給与所得を得るもの)となる個人事業主も増えてきました。
給与所得は給与所得控除といって、事業所得にはない税制上の優遇があります。
例えば、サラリーマンだと仕事のために文具を買ったり自家用車を使ったりするケースもあると思います。
大まかに言うと、当該支出を年収の大きさに応じて「みなし」で経費として認めてあげようというのが、給与所得控除です。
つまり、実際に支出しているか否かに係らず、税金計算上サラリーマンの場合は経費として認められます。
給与所得のある個人事業主の場合、仕事「のみ」に使うスーツは経費として認められるでしょうか。
給与所得のない個人事業主の場合はどうでしょうか。
前者の場合は給与所得控除に含まれていると見る体もあります(=事業の経費として認められない)し、後者の場合は、純粋な事業経費として見る体もあります。
したがって、
- ・その経費は、事業に直接必要と言えるか
- ・家事と事業が混在する場合、客観的に区分/証明できるか
- ・事業所得とは別に給与所得を得ていないか
等の観点から、チェックしてみて下さい。
芸能人等の経費按分例
経費按分の一例として、芸能人等のケースを考えてみましょう。
芸能人等の自由職業者については、プライベートと仕事の境界がしばしば問題となります。
この点につき、旅費を例にとると、以前税務署では以下のような考え方がなされていました。
ケース | 経費算入割合 |
---|---|
支出した費用が専ら業務上必要なもので、プライベートの介在する余地がない場合 | 100% |
支出した費用の主たる部分が業務上必要であるが、多少のプライベートも関係あると思われる場合 | 50% |
支出した費用の主たる部分がプライベートにも関係あると思われる場合 | 0% |
なお、芸能人等がスランプを脱出するために行う慰安旅行は、全額経費になりません。
また、「SNSに掲載すれば知名度が上がるだろう」といった漠然とした場合もダメです。
(広告収入を得ているのであれば、当該収入金額を限度として経費に算入することはできます)
芸能人等の確定申告にあたっては、「この場合は●●%経費にしましょう」といった事前打ち合わせを税理士としておくことです。