パート主婦と扶養控除の範囲
税務
夫の扶養内で働くには?
主婦のパート働き方
-税金と社会保険-
所得税
- 2015.01.31 -
扶養の意義
ここでいう、扶養とは、大きく分けて下記、2つの意味があります。
- ①税金上の扶養
- ②社会保険上の扶養
それぞれは異なる概念となりますので、区別して検討します。
なお、巷で良く言われる「103万円の壁」は、税金上の扶養。
「130万円の壁」は、社会保険上の扶養を指します。
夫の扶養の範囲内で働きたい、と、漠然と思われているパート主婦が多いと思います。
しかし、金銭的メリットで考えるならば、両者の区分が必要です。
税金上の扶養とは
パート主婦の場合、以下の税制優遇が用意されています。
- ①配偶者控除
- ②配偶者特別控除
所謂、「103万円の壁」ないし扶養とは、上記控除、を受けるためのものです。
この要件を満たす場合、夫は妻を扶養に入れることができます。
では、どんな金銭的メリットがあるのか。
それは、夫の所得から38万円の控除を受けられることです。
多くの方は、この事実だけで、「扶養に入ることは、お得だ」と感じるかもしれません。
しかし、問題は、「夫の所得が幾らか」、ということなのです。
では、具体例を見ていきましょう。
(分かり易くするため、簡易的税率を設定しています)
- A)夫の年収:300万円 → 税率:15%
- B)夫の年収:1,000万円 → 税率:30%
上記の場合、夫の扶養に入ることで、幾ら節税になるかというと、
- A)38万円×15%=5.7万円
- B)38万円×30%=11.4万円
となります。
つまり、夫の所得が大きいほど、節税効果が高いというわけです。
したがって、夫の年収が低いうちは、
「多少税金を払っても、パート時間を多くして実入りを増やす方が、有利」
となるわけです。
配偶者特別控除という選択
意外に忘れられがちなのが、上記②配偶者特別控除、という制度です。
仮に、「103万円の壁」を超えてしまった場合、どうなるでしょうか。
夫の扶養に入れない、と思われるかもしれませんが、そうではありません。
この場合でも、141万円未満であれば、扶養に入ることができます。
ただし、配偶者控除(38万円)と比べ、控除額は落ちます。
具体的には、妻のパート収入が上がるにつれ、控除額も下がる仕組みです。
(収入に応じ、段階的に、控除額:38万円~3万円に減少)
よって、「103万円の壁」を超えても、税制優遇は受けれます。
ただし、夫の合計所得金額が1,000万円超の場合、当該控除は受けられません。
扶養に入れるか、判定上の注意点
上記扶養の判定では、「103万円の壁」を説明しました。
しかし、それは、「パート収入のみ」という前提の話です。
株式投資等をしている場合
株式投資等をしている場合、確定申告により、扶養に入れない場合もあります。
以前までは、上場株式配当は税制上の優遇があり、税金も低率でした。
(以前:10.147%の源泉徴収)
しかし、現在は、税率:20.315%となっています。
よって、還付目的で確定申告するケースも増えるのではないでしょうか。
問題は、当該配当収入は、扶養判定に影響する場合がある、ということです。
よって、確定申告により扶養から外れる、というケースもあり得ます。
当該扶養判定には、個別事情も働きます。
よって、確定申告期に各地で行われている申告会場で相談するのも、手です。
2ヶ所以上でパートしている場合
同一年中に、複数のパート掛け持ちをする場合があります。
同時並行勤務する場合も、退職して再就職する場合もあるでしょう。
いずれにせよ、「103万円の壁」は、全てを合算した金額で、判定します。
男も妻の扶養に入れる?
日本では夫が働き、妻が扶養に入るという価値観が根付いています。
しかし、当然夫も妻(仮にパートであっても)の扶養に入ることができます。
例えば、無職になったときなどは、その年の在職時年収に応じて、扶養となれます。
余談になりますが、夫が妻の扶養になることは、最近珍しくないようです。
終身雇用が事実上崩壊し、失業・転職希望者も増えてきたように思われます。
社会保険料の負担の問題もありますので、検討してはいかがでしょうか。
なお、扶養の申請をするには、妻が会社にその旨申告することとなります。
年末調整前であっても、所得税の軽減を受けることができます。
夫の扶養に入るか、否か、そのポイント
以上のように、金銭的メリットを考えた場合、夫の年収が判断ポイントとなります。
日本の所得税は超過累進課税制度を採用しています。
(
所得税率は、国税庁ホームページ
で確認できます)
つまり、年収が高いほど、税率も高くなります。
(下限:5%~上限:45%)
扶養に入ることで、軽減される税負担は、税率が高い(=収入が多い)人ほど、効果が上がります。
反対に、世帯収入が低ければ、扶養に入るより、働いて税金を納めた方が、手取りは増えます。
本稿では、①税金上の扶養、を中心に解説しました。
しかし、金銭面では、②社会保険上の扶養、の方が影響が大きいです。
社会保険上の扶養については、こちら
で解説しています。
両者のバランスを考え、働き方を決めてはいかがでしょうか。