退職金と税金。分割支給は節税になる?
税務
退職金、税金は幾らかかるか
優遇税制
-退職所得と税金計算-
所得税
- 2015.01.31 -
退職金の税金
退職金は、税法上、退職所得に分類されます。
その場合、他の場合(例:給与等)に比べ、税負担が軽減されています。
では、具体的に、どのように税金が徴収が行われるのでしょうか。
また、年をまたいで分割払いされた場合、税負担は軽くなるでしょうか。
以下では、退職金に係る、税金の概要を見ていきます。
退職金と所得税の源泉徴収
退職金が支払われる際、多くの会社等では源泉徴収(=税金の天引き)が行われます。
源泉徴収税額の計算は、通常、以下の通りです。
- ①(退職金額-退職所得控除額)×1/2=A(千円未満切捨)
- ②上記Aを「退職所得の源泉徴収税額の速算表」に当てはめ=B
- ③源泉徴収税額=B(円未満切捨)
上記①「退職所得控除額」は、以下の算式にて、計算します。
区分 | 勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|---|
一般退職 | 20年以下 | 勤続年数×40万円 |
20年超 | 800万円+ (勤続年数-20年) ×70万円 |
勤続年数につき、1年未満の端数は切り上げます。
また、障害者になったことに直接起因して退職した場合、上記に100万円を加算します。
次に、上記②「退職所得の源泉徴収税額の速算表」は以下の通りです。
課税総所得金額等(A) | 税率(B) | 控除額(C) (千円) |
税額 | |
---|---|---|---|---|
下限 (千円超) |
上限 (千円以下) |
|||
1,950 | 5% | (A×B-C)×102.1% | ||
1,950 | 3,300 | 10% | 97.5 | |
3,300 | 6,950 | 20% | 427.5 | |
6,950 | 9,000 | 23% | 636 | |
9,000 | 18,000 | 33% | 1,536 | |
18,000 | 40,000 | 40% | 2,796 | |
40,000 | 45% | 4,796 |
退職金と住民税の源泉徴収
退職金は、住民税も源泉徴収(=税金の天引き)が行われます。
住民税の源泉徴収税額の計算は、通常、以下の通りです。
- ①課税退職所得金額×10%
- (10%=都道府県民税4%+市区町村民税6%)
退職金と確定申告
退職金の場合、通常、確定申告する必要はありません。
しかし、会社等に以下の書類を提出していない場合、注意が必要です。
- ・退職所得の受給に関する申告書
そのとき、税金(所得税)は下記の計算にて行われます。
- ・源泉徴収税額=退職金額×20.42%
つまり、通常より多くの税金が天引きされていることになります。
ただし、この場合であっても、確定申告により過不足税の税金を精算することができます。
なお、住民税は、上記申告書の提出有無に関わらず、一律10%となります。
しかし、住民税の場合、当該申告書には提出義務があります。
(地方税法第328条の7)
退職所得申告書の提出が無かった場合、10万円以下の過料が課される場合もあります。
(地方税法第328条の8)
複数年に分けて退職金を貰えば税金が安い?
所得税では、暦年課税方式が採用されています。
つまり、その年で得た所得に対して、課税される仕組みです。
とすると、退職金を年またぎに分割払いすれば、税金が安くなるのではという疑問が生じます。
小規模同族会社のオーナー等であれば、2ヶ所以上の会社に所属している場合があるからです。
例えば、今年はA社から1,000万円、来年はB社から1,000万円という具合です。
退職所得も超過累進税率を採用しているため、所得の大きさに応じ税率が上がります。
つまり、単年で2,000万円か、複数年で1,000万円かの違いです。
結論から言えば、分割払いでも、実際は税額にほとんど差異はありません。
なぜなら、2年目で受取る退職金から控除される退職所得控除の金額が減るからです。
短期間(前年以前4年内)に退職金を受けている場合、控除額の調整が行われます。
(所得税法施行令第70条1項2号)