法人による無償の役務提供と寄付金課税
税務
タダの仕事と課税
譲渡者と譲受人の取扱
- 低額譲渡含む -
法人税
- 2019.10.9 -
寄付の範囲
概要
会社法上の法人は、利益追求が第一命題です。
つまり、無償による資産の譲渡または役務の提供は想定されておらず、税法もこの考え方に準じています。
しかし、実態経済では無償または著しく低額な資産譲渡も存在します。
例えば、取引先の便宜を図るために、無償で見本品や提供するような事例です。
一般的に、無償=寄付と考えられますが、この場合、会計処理はどう行うべきでしょうか?
なお、以下はグループ法人税制の対象外法人を前提としています。
関連条文の確認
法人税法
法人税法第22条第2項には以下に規定されています。
(以下、条文。一部抜粋)
「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする」
つまり、お金を貰えなくても(=無償であっても)、売上計上してね。ということです。
さらに、法人税法第37条第7項には以下に規定されています。
「前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。」
つまり、お金を貰えなくても(=無償であっても)、客観的な市場価格(=時価)で価値を評価するよ。ということです。
役務の提供とは何か
資産の無償提供はイメージが付きやすいと思います。
例えば、不動産,現金,器具備品,有価証券等が該当します。
では、法人間における無償の役務の提供とは何でしょうか?
具体的には、受取手数料,受取地代家賃,受取利息,人的役務サービス等が該当します。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
- ①設計事務所が無償で設計業務を提供した
- ②親族に無償で事務所建物を貸出した
- ③無利息で親族企業に貸付を行った
ところで、経営コンサルティング事業はどの法人でも定款に記載されていると思います。
ですが、それが主力商品(=反復継続的に行われており、かつ売上が大きい場合)に該当せず、納品も無いケースならば、該当しないと思われます。
消費税との関係
消費税は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡,貸付,役務の提供を課税対象としています(消費税法第4条)。
よって、無償の役務提供=寄付には対価性がないため、原則課税対象外です(所謂、不課税取引に該当します)。
ただし、寄付行為が名目的であり、その寄付に対価性があると認められる場合は、課税対象となります(消費税法基本通達5-2-14)。
会計処理
譲渡人側
法人間で無償の役務提供をした側は、以下の会計処理を行います。
(借方) | (貸方) | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 10,000 | 売上 | 10,000 |
寄付金 | 10,000 | 売掛金 | 10,000 |
寄付金は損金算入に限度がありますので、全額が経費にはなりません。
分かりやすく2ステップで説明していますが、実際は売掛金が消えた処理が行われます。
譲受人側
法人間で無償の役務提供を受けた側は、以下の会計処理を行います。
(借方) | (貸方) | ||
---|---|---|---|
支払手数料 | 10,000 | 未払金 | 10,000 |
未払金 | 10,000 | 債務免除益 | 10,000 |
支払手数料(=損金)と債務免除益(=益金)が同額で計上されますので、課税所得は0となります。
よって、わざわざ計上する利点がありません。
法人間における無償の役務提供において、結論としては、「譲渡人には課税されるが、譲受人には課税がされない」という、譲渡人にとって不利な結果となります。
寄付と隣接経費(交際費,広告宣伝費等)との関係
法人間で無償の役務提供であっても、一概に寄付といえないケースがあります。
例えば、取引先に対して半年間フリーレントで建物を賃貸した場合はどうでしょうか?
継続的取引先であれば、見返りを期待して行われる商行為として、経済合理性がありそうです。
つまり、寄付に当たるか否かは、その法人の取引実態から判断する必要があります。
基準としては、以下のようなものです。
- ・その支出に合理的理由があるか
- ・支出先は誰か
- ・反復継続して行われるものか
- ・会社が所属している業界内でスタンダードに行われているか
- ・その会社特有の個別事情があるか
例えば、交際費でなく寄付と認められた場合は、相手先へ反面調査(税務調査)の可能性もありますのでご注意ください。